登録販売者試験では、相応の薬事法の知識が要求されます。受験用テキストでは、これをわかりやすく解説してありますが、どのテキストをみてもよく理解できない条文がある筈です。
たとえば、薬事法第69条第2項と第3項についてはいかがでしょうか? この2つの条文をいくら眺めてみても、その違いがよく理解できませんよね。今回はこの条文について解説しましょう。
○ 薬事法第69条第2項
都道府県知事は、薬局開設者、医薬品の販売業者等が、法第5条等の規定又は第72条第4項等に基づく命令を遵守しているかどうかを確かめるために必要があると認めるときは、当該販売業者等に対して、必要な報告をさせ、又は当該職員に、薬局、店舗、事務所その他当該販売業者等が医薬品もしくは医療機器を業務上取り扱う場所に立ち入り、その構造設備もしくは帳簿書類その他の物件を検査させ、もしくは従業員その他の関係者に質問させることができる。
*「都道府県知事」とあるが、店舗販売業にあっては、その店舗の所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、市長又は区長を指す。
この条文は、医薬品の販売業者等の業務の遵守状況について、行政権者がこれを確認するために設けられました。したがって、その「業態」に着目して行われるものといえます。
補足ですが、これら医薬品の販売業者等に対する立入検査の事務は、自治事務とされているので、当然ながら、当該許可権限を有する都道府県知事が行使する権限となります。しかし、危害の発生又は拡大を防止するためには、違反を察知した者がすみやかに命令を発する必要があることは自明のことです。そう考えると、立入検査を行うことのできる者は、本当に都道府県知事に限ってよいのか、という疑問が湧きますよね。そこで本条文の足らざるところを補完するため、薬事法第81条の2の規定「緊急時における厚生労働大臣の事務執行」が設けられており、緊急時においては、厚生労働大臣が立入検査等の事務を行うことができるようになっています。
○ 薬事法第69条第3項
厚生労働大臣、都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、法第69条第1項又は第2項に定めるもののほか必要があると認めるときは、薬局開設者、医薬品の販売業者等に対して、必要な報告をさせ、又は当該職員に、薬局、病院、診療所、飼育動物診療施設、工場、店舗、事務所その他医薬品、医薬部外品、化粧品もしくは医療機器を業務上取り扱う場所に立ち入り、その構造設備もしくは帳簿書類その他の物件を検査させ、従業員その他の関係者に質問させ、もしくは第70条第1項に規定する物に該当する疑いのある物を、試験のため必要な最少分量に限り、収去させることができる。
*「収去」は、行政処分の一つで、ある物をある場所から(無償で)強制的に取り去ることを指す。収去の処分が無償で行われた場合、所有権の剥奪を意味し、憲法第29条第1項の「財産権の不可侵性」に抵触することも考えられるが、本規定中「試験のため必要な最少分量に限り」として極度の制限が設けられていることもあり、「財産権は公共の福祉により制限されうる」とする憲法第29条第2項の規定に沿うものとみなされる。したがって、収去に伴い補償を行う必要はないものと解される。
この条文を眺めてみると、薬事法第69条第2項で言っていることと何処が違うのだろう、と疑問が湧いてきますよね。しかしこれは、「業態」に着目したものではなく、「物」に着目して設けられた条文なのです。
「物」とは、不良医薬品等を指します。不良医薬品等が流通したまま放置していると、保健衛生上の危害が発生してしまうことになりかねないので、誰のせいであるのかはとりあえず置いといて、流通している「物」が不良であるとの疑いがある場合、いち早くこれを確認することができるようにと設けられた規定なのです。
なお、健康被害が発生してからでは遅いので、疑惑を察知したものが迅速に対応できるように、厚生労働大臣、都道府県知事、保健所設置市の市長又は特別区の区長が重畳的に権限行使できるようになっています。
つまり、第2項の立入検査は、いわば「遵守事項を守ってキチンと業務をやっていますよね。」という趣旨であり、一方、第3項は、「オタクの商品は不良品かもしれないので調べさせてもらうよ。」という趣旨の立入検査といえるでしょう。

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