一般用医薬品とは、どのような医薬品を意味することばなのかご存知ですか?
登録販売者試験の勉強をされてきた方にとっては、至極かんたんな問題ですね。
しかし、ひと昔前まで一般用医薬品といえば、大衆薬とかOTCと呼ばれる薬のことを指すことばとして使われていました。大衆薬とは、医師の判断ではなく、一般の生活者の判断で使うことのできる薬のこと。一方のOTCとは薬局のカウンターの後ろの薬品棚に並べてあるような薬のことですから、ちょっと意味が違いますね。
一般用医薬品ということばの意味するところについて、皆、ぼんやりとは理解していましたが、あくまでぼんやりした意味でしか知らなかったのです。広く用いられることばでありながら、あやふやな解釈を残しつつ広く使われてきました。古き良きおおらかな時代が続いたのです。
しかし、あるとき、そのあいまいさが許されなくなってきました。
今を遡ること17年前の規制緩和ブームに端を発します。
社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政を実現することの緊急性にかんがみ、行政の各般にわたる制度・運営につき必要な改革の推進に資することを目的として行政改革委員会設置法が制定され、平成6年12月、行政改革委員会が総理府に設置されることになりました。これに呼応するかのように、コンビニ等の一般の小売店でも解熱鎮痛薬や総合感冒薬等の医薬品を自由に販売できるようにすべきであるとの意見がどこからともなく新聞紙面を賑わすようになり、行政改革委員会において一般用医薬品の販売規制が議論の俎上にのぼることとなりました。
翌平成7年、規制緩和推進計画が閣議決定され、規制緩和小委員会が設けられることとなり、そこで一般用医薬品の薬事法による規制の緩和が重点課題の一つとして取り上げられました。
規制緩和小委員会は、『利便性』を旗印とし、行政改革推進本部規制緩和委員会、さらに規制改革委員会、総合規制改革会議に改組改称されるにつれ、「薬局薬店は休日深夜に開いていないので不便である。コンビニで解熱剤や鎮痛剤を買えるようになると便利である」との声を日ましに大きくしていきました。
一方の厚生労働省は、『安全性』の観点から医薬品そのものの販売規制の緩和には踏み切れませんでした。しかし、一般用医薬品の購入に係る『利便性』については一定の理解を示さざるを得ず、平成11年に、作用が緩和で安全性にそれほど問題がないと考えられる医薬品を医薬部外品に移行する措置をとりました。平成13年には医薬品から医薬部外品への移行がさらにすすめられ、そうした結果、医薬品である消化剤や殺菌消毒剤等の一部が医薬部外品に姿を変え、コンビニ等の一般の小売店でも自由に販売できるようになったのです。
しかし、総合規制改革会議は全然ナットクしませんでした。
総合規制改革会議の狙いは、あくまで医薬品そのものの自由販売に据えられており、医薬品販売の規制緩和をめぐる議論は収まることはありませんでした。総合規制改革会議は、平成16年に規制改革・民間開放推進会議に改組され、そして同年12月、政府に答申し、次のような意見を提言しました。
「(前略)一般用医薬品販売制度について、消費者の利便と安全の確保の観点から、医薬品のリスクの程度を評価し、医薬品それぞれのリスクに応じて、薬剤師等の専門家の配置の在り方や専門家の関与における情報通信技術の活用等を検討し、その結論を踏まえて、必要な措置を講ずるべきである。」
なかなか味わい深い提言となっていますね。
規制改革・民間開放推進会議がこのような主張を展開する中、厚生労働省は新たな医薬品販売制度の設計に向けて粛々と準備を進めていました。平成16年5月、厚生科学審議会の下に医薬品販売制度改正検討部会が設置され、平成17年12月、報告書が取りまとめられました。
さっそく厚生労働省は、先の答申書やこの報告書を踏まえ、薬事法の一部を改正する法律案づくりに着手します。
規制改革・民間開放推進会議の答申書において、従前より厚生労働省が唱える『安全性』の観点に対し、「特例販売業や配置販売業では薬剤師の関与がないのに医薬品の販売が認められている」と、その矛盾をグサリと突かれていました。さらに医薬品販売制度改正検討部会の報告書において、「医薬品の販売にあたっては、必要な専門知識を有する者が関与し、相談に応じることを含め、適切な情報提供が行われることが必要不可欠である」との提言を受けていました。
ここで、そもそも論がはじまりました。
そもそも一般用医薬品とはどういった性質の医薬品であるのか?
意味するところに不透明さを残す一般用医薬品について、きちんと法律で定義する必要性にせまられました。
その結果が薬事法第25条に刻まれた有名な条文です。
「一般用医薬品とは、医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものをいう」
これはかなり踏み込んだ定義となりました。
薬剤師その他の医薬関係者による一定の関与がなければ、一般の生活者に一般用医薬品を販売してはならないこととなったのです。
では、「その他の医薬関係者」とは誰を指すのでしょう?
一般用医薬品の販売に従事しようとする者として必要な資質を有することを確認するために、登録販売者試験を行い、これに合格して登録された者を「その他の医薬関係者」とすることとなりました。
つまり「その他の医薬関係者」とは、登録販売者のことを指しているのです。
これらを踏まえ、薬事法の一部を改正する法律案が平成18年3月7日に閣議決定され、同日に国会に提出されました。4月19日に参議院本会議において可決。6月8日に衆議院本会議において可決され、同月14日、法律第69号として公布されました。
一般用医薬品の定義が法律により明らかなものとなり、法律に基づき登録販売者制度が規定されたのです。
6月14日が登録販売者の誕生日となりました。

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